住宅ローンは固定か変動か|今から選ぶなら「固定一択」だと考える理由と変動金利の罠
マイホームを買うとき、多くの人にとって人生で一番大きな借金になるのが住宅ローンです。「少しでも安い金利で借りたい」と誰もが思いますが、金利の“数字”だけを追いかけると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
この記事は、住宅ローンの「銀行の選び方・安く借りる方法」を掘り下げるシリーズの第1回です。銀行を選ぶ前の大前提として、まずは「固定金利か、変動金利か」という最初の分かれ道を扱います。
先に結論を言います。今からローンを組むなら、私は「固定金利(フラット35など)が鉄則」だと考えています。その理由と、多くの人が見落としている「変動金利の本当の罠」を、正直に書いていきます。
※本記事は我が家の考えを整理した一個人の見解であり、特定の金融商品の推奨や投資助言ではありません。金利の先行きは誰にも断定できず、結果として変動が有利になる可能性も十分あります。最終的な判断はご自身の家計とリスク許容度をもとに、必要に応じてFP(ファイナンシャル・プランナー)や金融機関にご相談ください。
~この記事の内容~
固定金利・変動金利とは?
住宅ローンの金利タイプは、大きく2つに分けられます。
- 変動金利:市場金利の動きに合わせて、返済の途中でも金利が上下するタイプ。当初の金利がもっとも低いのが特徴で、現在いちばん多くの人が選ぶ主流です。
- 固定金利:借りたときの金利が、一定期間または完済まで変わらないタイプ。代表格が全期間固定の「フラット35」です。当初金利は変動より高めですが、将来の金利上昇の影響を受けません。
ざっくり言えば、変動は「金利が上がるリスクを自分が背負う代わりに、当初の金利が低い」、固定は「金利の上乗せを払う代わりに、上昇リスクを銀行に肩代わりしてもらう」——というトレードオフです。つまり、選んでいるのは金利の数字ではなく、「将来のリスクを誰が持つか」なのです。
過去30年の固定金利・変動金利の推移
ポイントは、変動金利が過去30年一方的に下がり続けてきた、という点です。この「下がり続ける時代」に借りた人は、変動を選ぶのがほぼ正解でした。しかし2024年3月、日銀が約30年続いた超低金利政策(マイナス金利)を解除。金利が“上がる側”に完全に潮目が変わったのです。「過去30年、変動が得だった」という実績は、これからも続く保証にはなりません。
いまから私が住宅ローンを組むなら、固定一択
冒頭にも書いたとおり、いまから私が住宅ローンを組むとしたら、固定一択です。理由は、少し大きな話になりますが、経済のサイクル理論と、今の日本の状況から、そう判断しています。
著名な投資家レイ・ダリオ氏は、経済には数十年単位の「長期の債務サイクル(ビッグサイクル)」があると提唱しています。この枠組みに照らすと、いまの日本はサイクルの後半にあり、通貨の価値がゆるやかに目減りしていく(マイルドで持続的なインフレ)局面に入っている、と考える学者も少なくありません。
歴史的なパターンに従えば、こうした局面の行き着く先は「デフォルト(債務不履行)による派手な破綻」ではなく、「通貨価値がじわじわ失われていくステルス・インフレ」だとされています。そしてサイクルの後半では、通貨安やインフレを抑えるために、中央銀行(日銀)も最終的には金利を上げざるを得なくなる。実際、足元で長期金利や国債の利回りが数十年ぶりの高水準へと動きはじめているのは、その入り口なのかもしれません。
インフレが進むほど「現金(円)」の価値は下がり、「モノ(不動産などの実物資産)」の価値は上がります。ですから、低金利で住宅ローンを組んで実物資産を持つこと自体は、必ずしも悪い戦略ではありません。ただし——ここに、金利タイプの選択をめぐる致命的なリスクが潜んでいます。
変動金利が待ち受ける“恐ろしい未来”
変動金利に潜む「致命的なリスク」の本質は、多くの人が「毎月の返済額が変わらないから大丈夫」と勘違いしている間に、裏で元金が減らなくなり、最悪の場合、返済が行き詰まってしまう——という仕組みにあります。
ダリオ氏の言う「インフレ期の金利上昇」が起きたとき、この罠がどう発動するのか。ステップ順に見ていきましょう(金額はイメージをつかむための一例で、借入額が大きめのケースを想定しています)。
ステップ1:金利だけが先に上がる(返済額はそのまま)
物価上昇を抑えるため、日銀が利上げを行います。すると住宅ローンの変動金利も連動して上がっていきます。ところが変動金利には、急な返済額増加を抑える「5年ルール」があるため、金利がいくら上がっても、5年間は毎月の返済額(例:月15万円)が変わりません。一見すると安心ですが、実はここが地獄への入り口です。
ステップ2:内訳が激変し、元金が減らなくなる
返済額は同じ15万円でも、その「内訳」が裏で大きく変わっていきます。借入当初(金利0.5%)は、15万円のうち利息はわずか2.5万円で、残り12.5万円ずつ元金(借金)が順調に減っていました。
ところが金利が2%まで上がると、15万円の内訳は「元金5万円/利息10万円」に。毎月の支払いの3分の2が利息に消え、借金がほとんど減らなくなります。
ステップ3:「未払い利息」という借金のバブルが起きる
さらに金利が3%を超えると、ついに1か月分の利息が、毎月の返済額(15万円)を上回ってしまいます。こうなると、毎月きちんと返済しているのに元金が1円も減らないどころか、払いきれなかった利息が「未払い利息」としてローン残高に上乗せされ、裏で借金が増え続けるという異常事態に陥ります。
5年が経過すると、今度は「125%ルール」が発動し、毎月の返済額は15万円から18万7,500円(1.25倍)へ。最悪の状態からは多少改善しますが、それでも支払いの多くが利息に充てられる状況は変わりません。
そして、これと同時に進むのが生活費の上昇です。インフレで食費や光熱費が上がるなか、金利上昇でローンの返済額まで増える。このダブルパンチが家計を直撃します。しかもダリオ氏の理論では、下降フェーズの末期は経済の生産性が落ちるため、物価ほど給料が上がらない「スタグフレーション(不景気の物価高)」になりやすいとされます。収入は増えないのに、生活費もローンの負担も両方ふくらむ——逃げ道がなくなる。これが「変動金利の罠」が“致命的”とされる理由です。
まとめ|先は読めない。だから「対応できる選択」を
ここまで固定を推しておいて何ですが、正直に打ち明けると、我が家自身は変動金利で借りています。借りたのは約5年前。当時は超低金利がもっとも進んでいた時期で、「変動で借りるのが最も合理的」という意見が大勢を占め、まわりを見ても変動で借りる人がほとんどでした。実際その後もしばらく低金利が続き、恩恵も受けました。
しかし5年たった今、金利は上昇に転じ、私自身も繰り上げ返済を検討せざるを得ない状況になってきました。コロナ、戦争、世界的なインフレ——たった5年でも、当時と今とでは環境が激変しています。改めて、先のことは誰にも分からないのだと実感しています。
だからこそ大事なのは、どちらに転んでも対応できる選択をしておくことだと思っています。具体的には、「無理な借り入れをしない」こと、そして「資産価値が落ちにくい立地を選ぶ」こと。人口減少下の日本では、需要が細る立地は資産価値が大きく下がる恐れがあり、いざというとき売れる資産であることは、家計のセーフティネットになります。
ダリオ氏が「下降フェーズの個人」に説く3つの鉄則
最後に、少し視野を広げて。ダリオ氏は、こうした下降フェーズの国に住む個人に対して、次の3つの鉄則を提唱しています(あくまで彼の考え方の紹介です)。
- 単一の通貨(円だけ)に依存しない:富を守る手段として、ゴールド(金)や米ドル、外貨建て資産などへの分散が有効とされます。
- 単一の国(日本だけ)に依存しない:資産の置き場所や、場合によっては収入源も、グローバルに分散させる視点が重要だとしています。
- 「実物資産」を持つ:通貨が大量に発行される局面では、現金や債券より、金・不動産などの実物資産やインフレに強い優良株が有利になりやすい、という考え方です。
住宅ローンの話から少し広がりましたが、要は「一つのものに賭けすぎない」ということ。金利タイプも、資産も、立地も、”外れても致命傷を負わない”側に寄せておく——それが、先の読めない時代の我が家なりの構えです。次回は「同じ商品でも金利差がつく、銀行の選び方・少しでも安く借りる方法」を掘り下げます。
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