住まい

建築物の省エネ性能表示制度について解説

こんにちは。ぴーぴーまんです。

今回は、「建築物の省エネ性能表示制度」について解説していきます。

省エネ性能表示制度とは2024年4月から導入される新しい制度で、建築物の省エネ性能を消費者が容易に把握・比較できるようにすることを目的としています。

省エネ性能がラベルで表示されることにより、専門的な知識がなくても視覚的に見分けやすくなりますので、我々、消費者にとってはとてもありがたい制度ですね。

一方で、性能の優劣が見分けやすくなることで、中古住宅市場においても性能差が価格により顕著に反映されるようになります。

性能ラベルは段階的にレベル表示されますので、例えば僅かに次のレベルに到達できなかった場合、性能的には大差ないにも関わらず、自宅の評価額が必要以上に低く見積もられる可能性も考えられるわけです。

ですので、これから家を買う人は、建築物の省エネ性能表示制度についてどのように評価されるのか、仕組みをよく知っておくことが重要だと言えます。

この記事では評価方法の中身や、最低限どの程度の性能を目指すべきかを、できる限り簡単にまとめていますので是非、最後まで読んでいってください。

それでは早速始めていきます。

 

建築物の省エネ性能表示制度とは?

建築物の省エネ性能を消費者が容易に把握、比較できるようにすることを目的に2024年から導入される新しい制度です。

この制度では、ハウスメーカーなどの住宅販売業者、賃貸事業者に対し、省エネ性能ラベルの表示が義務付けられます。

省エネ性能ラベルは次のようなモノです。

各項目について順番に解説していきます。

①再エネ設備の有無

太陽光発電などの再エネ設備があれば、「再エネ設備あり」と記載できます。

再エネ設備の中では、太陽光発電が最もポピュラーですが、この表記のためだけに太陽光発電を導入するのは早合点です。

太陽光発電は初期費用が高額なこと、また発電量は天候に左右されること、また定期的なメンテナンスも必要で、経年すれば発電効率は下落することなど、こういった特徴を総合的に考えて導入の検討をする必要があります。

もし設置するのであれば近年は売電価格も下がってきているので、電気代削減を主目的に導入するのが最も合理的な考えです。

どれくらい電気代削減を見込めるのか、こちらのサイトで試算できるので試してみてください。

(参考)太陽光発電設備の設置に係る初期投資の回収期間の試算ツール

個人的には、年間を通して十分な日射が見込め、費用を10年以内に回収できそうであれば、トータル的に合理的な選択になるかなと考えています。

②エネルギー消費性能

国が定める省エネ基準からどの程度消費エネルギーを削減できているかを見る指標(BEI)を、星の数で示しています。

BEIの定義は、「設計一次エネルギー消費量」を「基準一次エネルギー消費量」で割った値で、値が小さいほど省エネ性能が高いことを示します。

肝心のBEIの計算方法ですが、結論からいうとWEB上の算定プログラムを使用して計算します。

エネルギー消費性能計算プログラム(外部リンク)

住宅の床面積や地域区分、断熱性能を示すUA値や日射取得率を示すηAC値、更には各住宅設備の消費エネルギーや再エネ設備がある場合はその発電量から総合的に計算されます。

各項目の数値を求めるのが難しいですが、住宅メーカーに問い合わせたり、ネットの参考値などを頼りに頑張ればある程度、算出は可能です。

例えばBEI=0.75と計算された場合は、1-0.75 で0.25、つまり25%が削減率となります。

BEIと星の数との関係性は下の表のとおりです。

画像は国土交通省ホームページより引用

再エネ設備のない住宅の場合は「30%以上の削減率」を上限とした5段階評価で、再エネ設備がある住宅は、再エネ設備によって生み出したエネルギーを加えられる7段階評価になります。

 

③断熱性能

「建物からの熱の逃げやすさ」と「建物への日射熱の入りやすさ」の2つの点から建物の断熱性能を判断します。

「建物からの熱の逃げやすさ」はUA値、「建物への日射熱の入りやすさ」はηAC値で評価します。

これら2つの値は、②エネルギー消費性能の導出でもお伝えした通り、正確な値を算出するのは専門家の範疇になりますので、素直に建てようとしている住宅メーカーに、過去実績等を聞くとよいと思います。

画像は国土交通省ホームページより引用

この表の横ラベルになっている地域区分は、日本全国を各地域の気候条件に基づいて8つの地域に分けて表示する仕組みで、それぞれの地域に適した省エネルギー基準を設定し、住宅の断熱性能を最適化するために用いられます。
例えば、寒冷地である北海道は「1」または「2」に分類され、温暖な沖縄は「8」に分類されます。

画像は国土交通省ホームページより引用

UA値とηAC値、それぞれの等級において低いほうの等級が、省エネラベルの断熱性能レベルになります。

例えば、地域区分「6」のエリアに住居を建てるとして、UA値=0.40、ηAC値=2.75だったとします。
そのときまずUA値は等級6の値(=0.46)を下回っていますが、等級7の値(=0.26)よりは大きいのでUA値の等級は「6」になります。
一方でηAC値は最高等級7の値(=2.8)を下回っていますので、ηAC値の等級は「7」です。
しかし先ほどの通り、UA値の等級は「6」ですので、低いほうの等級が省エネラベルの断熱性能レベルとして採用されるルールに基づき、この住宅の断熱性能レベルは「レベル6」と判定されます。

画像は国土交通省ホームページより引用

④目安光熱費

住宅の省エネ性能に応じて国が定める計算方法で算出された電気・ガスなどの年間消費量に、全国統一の燃料等単価を乗じて年間の光熱費を算出します。

当然、②エネルギー消費性能 や、③断熱性能 で高性能、かつ家のサイズが小さいほど、光熱費は安く算出されます。

ただし仮定されたある条件をもとに算出した値なので、年間光熱費の目安として見ておけばいいかと思います。

一方でここの数字は、中古住宅市場においてはもう少し重要性があがります。

ある2つの物件を比較検討した際、「目安光熱費の差」はそのまま「資産価値の差」に直結するからです。

⑤ZEH(ゼッチ)水準

ZEH水準はエネルギー消費性能がレベル3(★3つ)、断熱性能がレベル5以上で達成とされています。

ちなみにZEHとはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、⑥との違いがわかりにくいので解説します。

そもそもZEHの定義は、

「家庭で使うエネルギー」≦「家庭で生み出すエネルギー」

です。「家庭で生み出すエネルギー」とは太陽光発電などの再エネ設備が該当し、要は再エネ設備がない限り、どんなに省エネな住宅でもZEHには該当しません。

ただそのような家でも、省エネ性能に優れているには違いない訳で、要は「再エネ設備はないけれど、再エネ設備を導入すれば十分にZEHに該当する可能性がある省エネ性能にすぐれた住宅」という事実がわかるように、この項目が設けられているというのが私の解釈です。

⑥ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)

①の再エネ設備を備えており、かつZEHの定義である、 家庭で使うエネルギー ≦ 家庭で生み出すエネルギー を達成した住宅になります。

このラベル上では、最も達成が難しい項目であり、またこの項目のみは、BELS評価機関と呼ばれる第三者評価機関が認定して初めて付与されます。

 

最低限目指すべき性能

では次に、最低限目指すべき性能について私見を述べたいと思います。

最低限目指す性能、それはずばり「ZEH水準」です。

つまり、エネルギー消費性能がレベル3(★3つ)、断熱性能がレベル5以上ということになります。

ここまでであれば、どのハウスメーカー、工務店でも、十分に達成可能なレベルですし、光熱費等を考えれば、初期コストを考えても経済的に十分に合理性があります。

そして何より、健康的に住んでいくためには最低限これぐらいの性能はないと厳しいと私は思います。

逆にここから先は、性能アップにかかる費用がどんどん高くなっていき、「コスパ」的には悪くなってきます。

しかし今回の省エネラベルの追加で、冒頭にも述べた通り、中古住宅市場で省エネ性能がより評価されやすくなりますし、快適性はその分向上していきますのでやる価値がない訳ではありません。

まとめると、「ZEH水準は最低限、必達する」→「費用に余裕があれば省エネ、断熱性能を極める」→「それでもまだ費用に余裕があれば再エネ設備を導入しZEHを目指す」といった流れで進めると良いかと思います。

 

住宅ローン控除への影響

この省エネ性能評価ですが、実は住宅ローン控除への影響があります。

下の表をご覧ください。

2023年までの建築については、省エネ基準に関わらず、少なくとも3,000万円の住宅ローン控除枠をとることができました。

これが2024年以降ですと、省エネ基準に適合していないと、なんと控除枠が0円になってしまいます。

もちろん省エネ住宅に住むのが、快適性能という面で良いのは間違いないのですが、税金でこのようにあからさまに差異を設けてくるあたり、省エネとう聞こえの良いワードを盾に、より単価の高い住宅を推進していきたいという、国の思惑も垣間見えますね。

 

まとめ

建築物の省エネ性能表示制度について、内容を述べてきました。

省エネ性能表示は、消費者がより簡単に省エネ性能の良い住宅を見分ける手助けになる新しい制度です。

制度内容をよく理解し、よりレベルの高い住宅を選ぶことで、快適に住むことができるだけでなく、資産価値の向上も見込めます。

また今後は、省エネ住宅でないと住宅ローン控除を受けられなくなるので注意が必要です。

住み心地等も考えると、エネルギー消費性能がレベル3(★3つ)、断熱性能がレベル5以上の「ZEH水準」は最低限、達成しておきたいというのが筆者の考えです。

制度の詳細については国土交通省のホームページに記載がありますので、これから家を建てる人は是非そちらも参考にしてください。

https://www.mlit.go.jp/shoene-label/

それでは今回は、この辺で記事を終わりたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事が、皆さんの良い家づくりの一助になれれば幸いです。

どうもありがとうございました。